9年めの念願

「赤目自然農塾に行ってみたい」。
そう思ったのは、運よく市民農園の抽選に当って、農園をもつことになった2005年の春頃のことだった。

それから9年。わけあって仕事をしばらく休むことにしたことを端緒に、再びその思いが大きくなり、2014年2月9日(日)、はじめて赤目自然農の地を訪れることになった。

行かなかった9年間の理由

9年前思い立ち、強く行ってみたいと思っていたのに、なぜこうまで腰が重くなったのか? 「近くに借りた農園で手一杯だったから」、「仕事が忙しくてそれどころでなかったから」、「遠い赤目まで、通い続けることができるかどうか自信がなかったから」、「川口さんの自然農の信奉者というほどではなかったから」…

並べれば、それほどまでに、と出てくる行かなかった理由。ともあれ、今回、訪れることになったのだ。前日用意したgoogle Mapsの地図を見ながら、少し迷って辿り着く。

大雪の翌日に

実は、2月8日(土)から出かけて、山荘に宿泊するつもりだった。しかし、同日は近畿地方で大雪の予報。金曜の夜方から降りだし、滅多に積もらない地元・大阪交野も雪化粧。スパイクタイヤもチェーンももっていない当方は、山深く抜けて果たして行けるのか? この雪では、はなはだ疑問。赤目ならもっと降っているだろう。おそらく集合は中止になるのではないか?

そんな考えから、土曜から行くことはあきらめ、日帰りで9日の日曜に行くことにした。山間の道は、道路脇に雪が残っている。針インターを降り、国道369号を南下、府道28号に入り走るうち、「やっぱりこれは、昨日は無理だったな…」と。通行量がそれほど多くないこの道には、雪がそっくり残っている場所もあったのだ。スリップに気をつけ、慎重に進む。

赤目自然農塾到着は10時前。集合時間にはまだ30分以上ある。いちばん上の駐車場に車を止め、さて、どうしたものかと手持ち無沙汰におろおろ。駐車場で黙々と何やらしている人。声もかけづらい。しばらくぼーっとしてからようやく歩をすすめ、ゲートを抜け、小屋の前に行くとまだ人はまばら。「おはようございます」。と挨拶はしたものの、それ以上の会話はなし。手持ち無沙汰にしているうちに、徐々に人が集まりだす。田畑は一面、雪に覆われている。こんな状態で何をするのだろうと思いながら10時半を少し過ぎた頃、ようやくメガホンから声が発せられる。

この集会は、どうやら「学び」というらしい。そういえば、ウェブサイトにもそんな文字があった。

テキパキとした無駄のない動きに舌を巻く

朝の学びの最初、「田んぼを借りたい人?」との問いかけ。そちらには手を上げたが、「畑を借りたい人?」のほうには沈黙した。「見学だけ」ってのも選択できたのだが、そうすれば9年ごしにようやく来たのに、これっきりになってしまうような気がする。経験のない稲作をやってみようと、それでもそこそそこの一念発起だったのだ。

午前の実習は、まず麦の様子の説明。昨年の10月、11月、12月とそれぞれ種籾を降ろしたらしい。11月の苗の育ちが一番よく、その時期が赤目では適期という話。そして実習畑。雪のあいだから顔を出している、えんどうの幼い苗への支柱立て。場所を移し、1年間放置されていた畑の畝立て実習。笹が一面を覆っている。それがどんどん刈られてゆき、みるみる間に畝がたった。

マンパワーのすごさもあるのだが、テキパキとした無駄のないスタッフさんの動きに舌を巻く。

下の畑23番

午後は、田畑を借りたい人をスタッフさんが率いて巡回。自分が借りたいと思う田畑で手を上げ、あとはじゃんけんで決める。「なるべく集合場所に近いほうがいいな」と、すでにものぐさなことを考えている。空いている田、畑をまわりじゃんけん。一度じゃんけんに負けた。

実はもうこのとき、「畑も借りたい」と思っていて、もうそれが自分のなかでは最初からそう考えていたのと同様の動かしがたい欲求になっていたのだ。

2度めのじゃんけん。畑だ。これまで近くで借りたことのある市民農園、地区農園より随分広い場所。30m2はありそうだ。畑は経験もあることから、「これくらいあってもいい」と手を上げた。最後の2人まで残ったが、敗北…

勝った女性は農業自体がはじめてらしく、「広すぎやしないか?」と不安げ。スタッフさんとの話し合いで、半分ずつ、誰かと一緒に借りてもいいという話になった。それで私にお鉢が回ってきたわけであるが、少し広いと思ってもいたこともあるし、田んぼもやる気になっているので、願ってもない話だった。奈良市在住のFさん。いまでも仲良くしていただいている。ありがとう!

それが、いま借りている「下の畑23番」だ。

下の田25番

次は田んぼ。畑から石段を降りた場所。「借りたい人?」の2~3度様子見。すると、誰からも手の上がらない田が。草ぼーぼーで、台形のいびつな形をした角地。迷わず手を上げた。

それが、いま借りている「下の田25番」。

ワクワク

畑に田んぼ、借りているとはいえ、新しい自分の所有物。車で片道1時間半もかかる遠い地。9年前は、通い続けられるだろうか? と疑問視したところなのに、田畑が決まってワクワク。久しぶりの気持の充実感をもちながら、家路への車を走らせた。

2014年7月28日記す

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